第7章 赤葦と木兎と帰り道
金曜日の夜は、気持ちがうきうきする。
つまらないことも、たのしいこともうれしいことも、誰かに話したくなる。
「だから、!!!ほんとに、けいくんは、かっこいいんだって!!」
「うわー。赤葦キザなとこもあるんだなあー」
「キザて!!!笑えるブフォ」
お猪口片手にあったかい鍋を木兎さんと囲む。
木兎さんチョイスのお店は(思ったより断然)すばらしかった。
(そう伝えたら 木兎さんに怒られた。)
「でもまあ、あいつ、昔っから 女の子に対して なーんか 不器用で、でも やさしいところもあってよー」
「へぇー」
「だからそう思うと、なんていうか、赤葦が花束プレゼントするとか、笑える」
「ね!笑えるよ!でもさ、それがかっこいいの!!」
「ほう?」
「真っ黒なスーツに、メインのお花が真っ白なガーベラと、ピンクのガーベラなんだよ、それが映えるのなんの。
そんでお花屋さんでひとり悩む姿を考えたらきゅんきゅんするのっ!かっこいいの!」
「へいへい」
「あっ写真見る?」
「遠慮しとくわ、赤葦だし」
「ええ〜」
それに女の子じゃないし、と木兎さんは付け加えた。
木兎さんは相変わらず女の子すきですねぇ、なんて言ったら 奢らされそうなので黙っておこう。
「でもさ、」
「ん?」
「 赤葦、 すいれんちゃんと付き合えて良かったと思うよ。ツンツンの無気力のアレだから、高校じゃ つまらん取り巻き女子がいるだけでさ」
とりまき女子か。
確かに赤葦くんの高校時代、写真で見た感じ、身体つきは もう 男性で、でも、まだ、あどけなさが残ってて、
(でも、あれから背はのびてるらしい)
まあ確かにギャップにやられる女の子が続出するの、わかる。
キャーキャー言われてたのかな、
胸がちくっとした。
「こんばんは」
「あれーあかーしじゃん」
「けいくん」
けいくんを大学と今と見てきたけど、けいくんは、木兎さん曰く、「 すいれんちゃんと付き合うようになってから、表情がユルくなった」そう。
はて。どのへんがユルいのだろうか。
切れ目のおめめは きょうもぱっちりで、(くそう うらやましい)、まゆも 髪もつーんっとしてる。(あの髪はかわいい。)
「隣失礼します、木兎さん」
「いいよー、なにのむの?」
「車なんで、ノンアルで」