第3章 3.仲間意識は持たないから【百夜優一郎】
「私の家族はとっくに死んだわ」
「俺たちは家族だってグレンは言ってたぞ」
その言葉にはぁっと溜息をつく。
「あんた達が私の事を仲間だと思ってようが、家族だと思ってようがどうでもいいけど、私はあんた達のことを家族だとは思わない」
キッと百夜を睨んだ。
「何だよお前」
さっきまで聞いていた音よりも低くなった声で言葉を放つ君月。
「私に殺されたくなかったら私を“家族”だなんて思わないことね」
「……え」
何を急に、とでも言いたそうな早乙女。そりゃあそうだろう。理由は暮人さんたち柊の上層部と深夜さん、それにグレンぐらいしか知らないだろうから。
あと1人知ってる人居たけど。
「そうですね。確かに、死にたくなかったら清華さんは怒らせない方が良いかもしれませんね~」
クスクスと笑うシノア。何考えてんのか分かんないけど、“家族”だなんて呼ばれないならそれでいい。
***
「お前なー」
ガジガジと頭の後ろを掻くグレン。今日、執務室に呼ばれたのは私だけ。
だいたいは私と百夜優一郎の2人で呼ばれるんだけどね。
「もうちょい、仲間意識とかねーの?」
「ないね」
「おいおい……」
だいたい、家族になんてなるつもりは微塵もないから仲間意識なんて必要ないでしょ。
「まだ、気にしてんのか」
ピクリと肩が動いた気がする。そう。私はずっと引きずってる。引きずらなきゃいけないの。
「当たり前でしょ。私が暴走して『隊員、全滅です』なんてあっちゃいけない事だしね。仲間意識持たれると、いざという時に私を殺してもらえないじゃない」
「あれからもう、10年近く経つ。1回も暴走してないなら問題ないんじゃねーのか」
「万が一って場合も」
反論しようとした私の言葉をグレンが遮った。
「仮に、仲間意識とか持たれる前にお前が暴走してもアイツらはお前を殺せねぇよ」
「はぁ?」
「そういう奴らだ。諦めるんだな」
***
パタンと、今度は静かに閉まるドア。
「あいつには辛いかもな……」
それでも乗り越えてもらわないといけない壁だ。
「どーなるのかね」
***
1人で訓練してるあいつらを見る。
私は、絶対に仲間意識なんて持たないから。
楽しそうに笑っている百夜優一郎を睨みつけるようにして訓練場を出た。