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終わりのセラフ 短編集

第1章 1.彼の方が上手【柊深夜】





「お、やっとだね。じゃあまずは」

 少し瞳を輝かせたのにドキッとしたことには気づかないフリ。

 ズイっと顔を近づけて来る深夜にかなりの嫌な予感。こういう時だけ当たる勘には嫌気が差す。

「……んっんぁ」

 20歳の時に深夜と婚約してから知ったが、深夜はかなりのキス魔だ。しかも、かなり上手い。

 離された唇に一抹の寂しさを覚えたのは気のせいだと思いたい。今は私が椅子に座っていたから良いものの何時もは私の腰が抜けている。

「まだまだよ。もう1回」

 そう言って口づける深夜。ねっとりとしたキスが私の思考を惑わす。

「ん、ぁ」

 息が苦しくなってきて深夜の胸板を押す。惜しむようにして唇が離れた。

「ちょっと、僕まだ満足してないよ?」

 えっと顔を見ればニコニコと笑っていた。最早悪魔の微笑みにしか見えなくなってきた。

 いや、こんなイケてる悪魔がいたら困る。一部の人から悪魔なのに天使って言われてそう。

「……何1人で百面相してるの?」

 めっちゃ不審な目見られてた。視線が痛いです。

「まだ満足してないって言ったじゃん」

 椅子から立たされて壁際に追い詰められる。すこ~し構ったら満足すると思ったのに。

「ちょこっと構えば満足すると思った? ざんね~ん。それはありえないよ」

 この手のことは深夜の方が1枚、いや2枚上手だったらしい。

「今日は寝かせないつもりだからね。清華」

 その一言に苦笑いし、今日中に書類を終わらせることを諦めた。


END
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