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薄桜鬼~私を見つけて~

第12章 風間千景の駆退


俺の苛立たしさを含んだ物言いに、不知火は一層愉快さを顕にして立ち上がり

「何だよ、風間が口説いてる最中だったのか?
 そりゃ野暮な事をしちまったなぁ。」

俺の方に歩み寄りながら僅かに声をひそめて言った。

「邪魔した詫びと言っちゃ何だが
 一つ良い事を教えてやるよ。」

不知火の顔を視線だけを動かしてちらりと見やる。

「何だ…?」

「この女鬼は混じりっ気の無い純血だ。
 東の鬼を統べる頭領の一人娘だからな。
 今ではその東の鬼の只一人……生き残りだ。
 風間の嫁にするには此れ以上の上物は居ないだろうよ。」

「ほう………」

不知火の進言に俺は益々この女鬼に興味が沸き、何が何でも手に入れたいと思った。

不知火は振り返り、女鬼を見下ろして言い聞かせるように告げる。

「すまねえな。
 お前の好きに生きれば良いって言ったのは嘘じゃ無いが
 鬼は人間と一緒に居たって碌な事にはならねえ。
 その後ろに居るくたばり掛けの男より
 風間に着いて行った方がお前の為だと思うぜ。
 風間の元で一杯可愛がって貰うんだな。」

不知火の珍しく真っ当な台詞に俺は驚いたが、それに異を唱える気は更々無かった。

「まあ、俺の老婆心から出た戯れ言だ。
 聞き流して貰っても構わねえぜ。
 さてと……どうやら喋り過ぎたみてえだし、
 邪魔者は退散するわ。
 後はお前等三人で話を付けろよ。
 じゃあな……お姫さん。
 縁が有ったらまた会おうぜ。」

くくっと喉を鳴らして笑った不知火は二階の窓から飛び出し、軽々と屋根を越えてその姿を消した。
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