第11章 私の独白
人を斬るという過った方法で目覚めた自我が崩れ始めたある晩、私はまた男達から指示を受けた。
土砂降りの雨の中、三人の『役人』と呼ばれる人間を待ち伏せ、言われた通りに斬り殺した。
だけどこの役人の腕が立ったからか、私の心が乱れていたのか……私は左腕と脇腹に深傷を負ってしまう。
雨でずぶ濡れになり、傷口から夥しい血を流して戻った私に男達は報告だけを求めた。
「どうせ直ぐに戻るのだから」と私の身体に着いた傷に目を向ける事すらしなかった。
私は這い擦るようにして自室に戻り、そのまま仰向けに倒れ込んだ。
余程の深傷なのか……何時もなら既に戻っている筈の傷が中々塞がらない。
直ぐに治癒するからと言っても痛みが無い訳じゃない。
苦しく無い訳じゃ無い。
このまま死んでしまえたら…産まれて初めて願ったのに……
翌日には何事も無かったかのように傷は綺麗に消えていた。
その日、私は男達に庇護されて以来初めて誰にも何も告げずに一人で市中に出掛けた。
一日中宛ても無くふらふらと歩き回り、ふと気付けば鴨川に掛かる橋の上に佇んでいた。
昨夜の豪雨のせいで増水した川面をぼんやりと眺めながら、此処から飛び込めば死ねるだろうか……そんな事を考えていた。