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薄桜鬼~私を見つけて~

第1章 僕達の舞台


「兎に角、あの浪士共が企んでいる事はこいつに聞くしかねえ。」

土方さんはゆっくりと屈んでから、彼女の顔を覗き込んだ。

「なあ……この状況だ。
 さっさと吐いちまった方が身の為だと思わねえか?」

態とらしく脅し付ける土方さんの顔を、彼女は微動だにせず見つめている。

「野郎相手の拷問は時間ばかり掛かって仕方がねえが
 相手が女なら愉しめる遣り方だってある。
 ……………俺が言ってる意味は分かるよなぁ?」

『だからそんな事になる前にさっさと吐いてしまえ』と、土方さんは言っているんだ。

それでも彼女は怯える素振りも見せず、きょとんとした様子で僕達の顔を見渡した。

その態度に皆が困惑し、この娘には話が通じないんじゃないか…とすら思わされた。

「そのままじゃ話したくても話せねえからな…これは取ってやる。
 いいか、舌は噛むなよ。
 そんな素振りを見せた時には………」

言いながら土方さんが猿轡を外した瞬間………

彼女は破顔した。

その清々しいまでの満面の笑みに、僕達の困惑は動揺に変わる。

「………てめえ、俺達を馬鹿にしてやがるのか?」

激しい動揺を隠しきれないまま、再び土方さんが脅しても彼女の笑顔は揺るがなかった。


「話す気はねえみたいだな。」

土方さんの苛立った声が低く響く。

「じゃあ……てめえの望み通りにしてやるよ。」

「土方さんっ……それって………」

「愉しい仕事じゃねえ。」

慌てた平助の声を遮って、土方さんが続ける。

「関わりたく無い奴は出て行け。
 出て行っても別に咎めやしねえ。
 但し……こいつの件は一切他言無用だ。」

土方さんの目が本気である事を示すように鈍く光った。
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