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薄桜鬼~私を見つけて~

第1章 僕達の舞台


……これからこの娘は土方さんに凌辱される。

おそらくまだ男を知らないだろう。

ここから先、どれ程の苦痛を与えられるのかな。

ねえ、今の内に………早く……喋っちゃいなよ。

僕がそんな事を考えていると

「ああ……俺は無理だな。」

左之さんが溜め息と共に呟いて頭を掻いた。

「土方さんの言っている事は分かる。
 だが俺はやっぱり女が凌辱されるのを
 黙って見てるなんて出来そうにねえ。
 だからこの件には関わっていないって事にさせてくれ。」

左之さんは踵を返して「悪いな」と、そのまま振り返る事無く土蔵から出て行った。

「俺も………俺も無理だ。
 ………ごめん。」

俯いて震えた声でそう告げた平助も左之さんに続く。

出て行った二人の背中を視線だけで追いながら土方さんが問い掛ける。

「総司と斎藤は………どうする?」

「俺は……副長の指示に従います。」

一君は無表情のまま、そう答えた。

「……総司は?」

土方さんに見据えられても僕はまだ迷っていた。

土方さん一人に嫌な仕事をさせるのは確かに躊躇われる。

でも左之さんや平助の気持ちも充分理解出来た。

僕だって彼女を苦しめたい訳じゃない。

「僕は……良く分かんないや。
 取り敢えず保留って事で……。」

結局僕は曖昧に答えを濁したけれど、土方さんはそれを咎めもせず「お前らしいな」と苦笑した。

「じゃあ、斎藤。
 俺が居ない時はお前がこいつの世話をしろ。
 総司は斎藤の補佐に着け。
 ……分かったな?」

僕と一君は無言で頷く。

僕達のそんな態度を見届けてから、土方さんの顔が僅かに苦しそうに歪み

「じゃあ……お前達も出て行け。
 これから先は見せ物じゃねえ。」

そう言って僕と一君の退出を促した。

僕は彼女の目を見つめて「ごめんね」と謝罪してから出口に向かう。


僕と一君が土蔵を出る間際にぎしりっ…と梁が軋み、彼女の身体が吊り上げられる音が僕の耳にこびり付いた。
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