第10章 僕達の乱舞
金色の髪に深紅の瞳。
女と見紛う程に端麗な容姿をしている。
その隣には顎髭を蓄えた如何にも屈強そうな男も佇んで居た。
「君達は何者?浪士じゃないよね?
どっちにしても逃がす訳には行かないけど。」
僕が不敵に笑ってそう言うと男は露骨に面倒臭そうな溜め息を吐き、その態度に苛立った僕は全力を持ってして向かって行った。
それで結局この様だ。
男はあっさりと僕の攻撃を受け止め、その華奢な体躯からは想像出来ない程の圧倒的な力で僕を捩じ伏せ蹴り飛ばした。
立ち上がれなくなった僕が気力だけでは負けまいとその男を睨み続けていると、男の表情が酷く愉快そうに歪む。
「そんな顔をするな。
人間相手にしてはなかなか愉しませて貰ったぞ。」
僕の眼前に刀先を突き付けて男はふん…と笑った。
「風間、遊んでいる時間はありません。
面倒な事になる前に引き上げましょう。」
横に居る屈強そうな男が窘めると
「そう急くな、天霧。
愉しませて貰った礼に
こいつに引導を渡してからでも遅くはあるまい。」
風間と呼ばれた男は右手で大きく刀を振り上げる。
「此処で俺に出会ったのがお前の不運だ。
………諦めろ。」
ここまでか?
僕の人生はここで終るのか?
まだ何も成していない。
僕は……まだ…………
僕が痛恨の想いで覚悟を決めようとした瞬間、僕と風間の間に人影が飛び込んで来た。