• テキストサイズ

薄桜鬼~私を見つけて~

第9章 沖田総司の愛憐


「………え?」

「だって『全部話さなければ逃がす訳にはいかない』って言ってた。」

「そうだけど………」

「だから喋らなかったのに。
 喋らなくても此処を追い出されちゃうの?」

彼女は泣き出しそうな表情で必死に僕に掴み掛かって来る。

「もしかして……
 此処に居たいから話さなかったの?」

大きく頷いた彼女を見て、僕の鼓動は早鐘のように打ち始めた。

「どうして……?
 僕達は君にこんな酷い事をしたのに。
 それなのにどうして此処に居たいなんて…そんな事を……」

「酷くなんて無い。
 ………嬉しかったの。」

僕には彼女の言っている意味が良く分からない。

あんな事をされ続けて『嬉しい』なんて普通じゃない。

それでも僕は……やっぱりこの娘が欲しいと思った。

「嬉しい…って?」

少しでも彼女の真意を理解したいと問い掛けた僕の言葉に、彼女の瞳がじわりと滲む。

「皆が私を求めてくれた。
 皆が私を抱き締めてくれた。
 私に話し掛けて、私の身体に触れてくれた。
 それが凄く嬉しかったの。
 …………そう感じるのって可笑しな事なの?」

まるで子供が大人に対して素朴な疑問を問うような口調に、僕は堪らず彼女の身体を力一杯抱き寄せた。
/ 70ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp