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薄桜鬼~私を見つけて~

第1章 僕達の舞台


「こいつは何だ?」

土方さんがその相手から目を逸らさないまま問い掛けると

「分かんねえけど……いきなり上から斬り掛かって来やがった。」

焦った様子を隠すでも無く平助が答えた。

「平助……怪我は?」

今度は一君が問う。

「それは大丈夫。間一髪で避けたからさ。」

平助は少し愉しそうに笑った。

「浪士……じゃねえよな。
 まぁ、この態度を見る限り
 俺達の味方じゃねえ事は確かみてえだが。」

言いながら左之さんも槍を突き出す。

「奴等の用心棒か?
 とてもそうは見えないが……。」

そう言う一君には相変わらず一分の隙も見当たらない。

口々に話す僕達の顔を刀身を構えたままそいつは探るように見渡し、その視線が僕の顔を捉えて一瞬止まった。

僕もそいつの目を見返して、くつくつと笑いながら言う。

「どうやら僕達に襲撃させたくないみたいだし…
 さっさとこいつを捕まえちゃいましょうよ。」

「そうだな。
 浪士に聞けないなら、こいつに聞けば済む事だ。」

土方さんも不敵に笑った。

「君さぁ……僕達が誰だか分かってる?
 無駄な抵抗はしない方が怪我しなくて良いと思う………」

僕が言い終わらない内にそいつは一足飛びに向かって来た。

その奇をてらうような動作に僕達全員が少なからず動揺した。

新選組の幹部が五人揃って居るんだ。

簡単に捕まえられる筈だった。

それなのに土方さんがやっとの思いでそいつの鳩尾に刀柄を打ち入れて意識を失くさせた時には、僕達は全員が必死の形相で息を切らせていた。
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