第1章 僕達の舞台
ぎしぎしっ……と土蔵の中から梁の軋む音が聞こえる。
今夜もまた彼女が土方さんに責められているんだ。
その行為を想像して、僕は少し眉をひそめた。
そこまでされてもどうして彼女は口を割らないのか?
僕は不思議で堪らない。
そう……思えば最初から不可解な事が多過ぎる。
だって、三日前のあの夜……
僕達に捕まった彼女の目は………嬉しそうだったんだ。
「総司……そっちに廻れ。」
「了解。」
その夜、僕達は過激派浪士の集会を襲撃する予定だった。
何か途轍もない事件を計画しているという情報を得て、それを聞き出す為に浪士を捕縛するのが目的だ。
僕と一君、左之さんに平助、それに土方さん。
この五人で集会が行われるという宿場に向かい、土方さんの指示で各自配置に着いた。
そして今まさに踏み込もうとした矢先
「うわっ!」
平助の驚いたような叫び声が響く。
ばらばらに待機していた僕達は弾かれたようにその声に反応し平助の元に集まると、そこには異様な風体の輩が一人、剥き出しの刀身を構えて平助と対峙していた。
まるで忍び装束のような黒尽くめの格好に、顔も黒布で覆っていてぎらりとした眼だけを覗かせている。