第4章 沖田総司の嚆矢
「お腹空いてないの?
食べなきゃ駄目だよ。
君にこんな事をしている僕が言うのも何だけどさ……
どんなに辛い状況にあっても、
お腹が一杯だとそれだけで幸せだって思えるからね。」
手首の拘束を弛めてからふと彼女の顔を見ると、その目からはぽろぽろと涙が零れていた。
「え………?
どうして泣いてるの?」
僕は慌てて彼女の様子を確かめる。
「どこか痛いの?苦しい?
お医者さんを呼んだ方が良いのかな。」
立ち上がろうとした僕の襟首を両手で掴んだ彼女はぶんぶんと首を横に振った。
その縋るような濡れた瞳に僕の意識が固まってしまう。
「……じゃあ……泣いてるのは何故?」
溢れ続ける彼女の涙を僕は親指でそっと拭った。
「君…泣き黒子があるんだね。
本当は泣き虫なのかな?」
僕の言葉に彼女は涙を流しながらもにっこりと笑う。
「笑うと笑窪が出来るんだ。
この前は気付かなかったなあ……。
凄く可愛い。」
そのまま吸い寄せられるように僕は……彼女に口付けた。
彼女は拒む所か、両腕を僕の首に廻し応えてくれる。
「…………ん。」
暫く唇を重ねてから僕はそっと問い掛けてみる。
「ねえ……一君の唇に傷を着けたのはこれ?」
少し申し訳無さそうな彼女の表情が、僕の質問を肯定していると思った。
「それはちょっと……妬けるな。」
言いながら彼女をゆっくりと押し倒しその首筋に舌を這わせると、彼女の身体がびくりと反応する。
「大丈夫……優しくするよ。
土方さんよりは……ね。………多分。」