Run.run and fly. ーハイキュー!!ー
第1章 東北自動車道 下り
「うぉいゴラ、テメエらァッ!!!高校生の分際で何つうモンに乗っかってんだオイィ!!!!何だソレは、走るゴージャスか!?今すぐ降りろゴラァァァ!!!!」
「わあああァァァッ!!!!た、田中さん!落ちる!死ぬーーーーッ!!!!」
「ちょッ、待て待て待て待てーッ!!!」
「ぃややややややッ、たッ、たッ、田中あッ、落ち着けえッ!!!!」
喚く田中に煽られて日向まで車外に体を持って行かれそうになるのを、澤村と菅原が慌てて掴まえる。
隣の騒ぎに気が付いたのか、茂庭が二口の袖を引くのが見えた。
こちらを見た二口が、プと吹き出してグッと親指を立てる。
「・・・が、ぁががああァァァ!!!!!すざけんなグリィヤアァァ!!!!」
赤くなって青くなって土色になった田中が窓枠に片足かけていよいよ血迷うのを尻目に、伊達工の貸し切りバスは軽快に烏野のバスを追い抜いて行った。
最後尾に座っていた青根らしい大きな人影が追い越し様にペコリと頭を下げたのが見えた。
「だあッ」
三人がかりで引っ張られていた田中が、車内に引き込まれて日向を潰した。
澤村と管原も巻き添えを食って通路に尻餅をついた。
「つぅー、おいこらッ田中ッ!!!」
澤村の叱責を田中のデカイ声がかき消す。
「へイヘイヘイヘーイッ、運転手さぁん!!!!あのバスガンガン抜いちゃってえェ!!!カラオケないしコナンくんもいないんだから、せめてカーチェイスで魅せちゃってえェ!!!!」
「・・・ヤバイ。手に負えない・・・清水、頼む」
澤村に拝まれて、潔子が目を瞬かせた。
歯を剥いて運転手さんに速度違反を迫る田中をチラリと見、真顔で考え込む。
「あッ、あ、潔子さん!」
傍らの谷地がるるぶの一点に指先を置いて潔子を見た。
「次のサービスエリア、休憩ポイントですよね!?塩チーズソフトがおすすめだって出てますよ!?美味しそう!!!潔子さん、ソフト好きですか!?」
皆が固唾を呑んで見守る中、潔子がコクリと頷いた。
「・・・・・好き・・・・」
「・・・・・・・!!!!!!!!!」
車内にズキュンと横殴りのときめき風が吹き荒ぶ。
「あ・・・・あ・・・ぅがあぁぁぁ・・・・き、潔子さんん!!!!!」
胸元を押さえ通路に膝をついて悶えた田中を、澤村と菅原が捕獲した。