Run.run and fly. ーハイキュー!!ー
第4章 青少年会館ー宿舎ー
「ついでにお前も一緒に山に籠もれ、二口。ホント口が減んねえな。一口か無口になったんじゃなかったのか?」
茂庭が情けなさそうにため息をつく。
「減る口なんかねぇだろ。三口だ。もう諦めて増やしとけ」
斜め下を向いてボソッと言った影山の台詞に、青根と野村以外の全員がブフッと噴き出した。
「三口…?ミロ?麦芽飲料?ぷぶ…ッ」
田中が目を三日月形に歪めて、口が減ったり増えたりしている瘤だらけの"二口"の肩を叩く。払い除けても腹を抱えて笑う田中に二口の目が吊り上がった。
「笑い過ぎだッ、このコケシ…ッ」
「ミロか。体に良くなったな。大出世だ、二口」
鹿爪らしい顔を堪えた笑いで震わせながら、笹谷が咳払いした。
「ミロじゃねえし!三口だし!」
ムッとして言い返した二口を、澤村が不思議そうに見る。
「三口でいいのか?」
「いや、そうじゃなくて!」
いきり立つ二口をスルーして、菅原と東峰が風呂場に向かう。
「少ないよりは多い方がいいんじゃねえの」
「そういう問題じゃないんじゃないか?」
「あー。旭が東北峰になったからって得する訳じゃないみたいな感じか?」
「…東北峰って…。どう読むのよ、ソレ…。止めてくんない、人の名前いじんの…」
「そう!それだ!俺が言いたかったのは!人の名前をいじんなって…」
振り返って叫んだ二口の鼻先でピシャンと風呂場の引き戸が閉まる。
「…ちくしょう…どいつもこいつも…」