Run.run and fly. ーハイキュー!!ー
第3章 盛岡梅誠高等学校
高松の池は憩いの場らしい。散歩をする老若男女が引きも切らない。
バスを降り立った烏野メンバーは、水と草いきれが匂う梅誠高校の前でキョロキョロ辺りを見回した。
「ホントに池の横だ。いいね」
「こら登下校も外周も優雅なモンだな」
菅原と澤村が長閑な環境に和ましく頷き合う横で、田中と西谷が息を呑んだ。
「・・・・・ッ、スワン!?」
「スワンボートだ!スゲエ、足漕ぎだ!!」
「わわわ、若い二人がぁ!!」
「んん?頑張ってんな!?男が特に!けどありゃ鍛え方が足んねえぞ。グルグル回るばっかで全然進んでねえし」
「ノヤっさん、それがミソなんだよ!ああやって女の子の目を回してあわよくばチューのひとつもカマしてやろうっつう姑息な罠なんだよ!?」
「ああ!?そらダメだ!そらイカン!!なんッつう卑怯なヤツ!田中、行くぞ!」
「おうよ、ノヤっさん!子羊ちゃあーん!大丈夫!田中が今助けに行きますよおォォ!!!!」
「誰もお前らに助けて欲しいなんて思ってない。到着早々暴走すんな!」
田中と西谷の襟首を掴んで澤村がしょっぱい顔をする。
「むしろ邪魔するなって話だよなあ。ははは」
笑いながら傍らの東峰を見上げた菅原は、気の優しいアタッカーの顔色に気付いて笑みを引っ込めた。
「旭?」
「・・・ん?・・・あ、何?どうした?菅原」
ハッと目を瞬かせて東峰が菅原を見返す。
菅原は迷うように口を開きかけて閉じ、にかっと笑った。
「梅誠は可愛いコが多いからな。だからってお前、鼻の下伸ばしてっと引かれるぞ?ビシッとしろ、ビシッと」
東峰の猫背をバチンとはたいて、菅原は腰に手を当てて仁王立ちする。
「合同遠征上等だ。いいとこ見せてやるべ、旭」
「たはは」
額を撫で上げて苦笑いした東峰の肩を、澤村が追い越し様にパンと払う。
「笑ってねえで、頼むぞ、エース」
「マジで負けらんねっスからね、旭さん。バスゴージャスの連中なんか早ェとこぶっ潰しとかねえと!時速百キロでカラオケなんて、何処のセレブだっつの!高校生の分際でよ!チャリで走れ!チャリで来い!」
田中の主張に月島がフッと失笑する。
「田中さんは帰りそうしたらいいですよ、一人で。高校生らしく」
「え?俺チャリ持って来てねえし」
「持って来てたら自転車で帰るんですか?何日学校サボる気です」