第1章 お嫁さんになりたい!
これは奇跡ですか。
はい、紛れもなく。
焦がれて止まない木兎先輩が目の前にいるのだ。これを奇跡と呼ばずになんと呼ぶ。
しかもだ。
木兎先輩が、俺に、バレーを教えてくれている。奇跡すぎて涙でるし、実際ちょっと涙目だ。
「うーん……櫻田は肩に力が入りすぎなんだよなあ。もうちょっとこう、リラックスしてレシーブしてみ?」
「こ、こう……スか?」
「ん、そう、いい感じ!」
優しくて頼れるとか何なの。
天使なの。天使でしかない。
ありがとう神さま。
地に頭を擦りつけてこの出会いに感謝します。
興奮しすぎて内心ちっとも穏やかじゃないが、しかし、ここは冷静にだ。
先輩のアドバイス通りに身体を動かすと、ポン、優しい音がしてボールが山なりに宙を舞った。
「おー! スゲエじゃん!」
木兎先輩は、バシバシと俺の背中を叩きながら笑う。俺の背中を叩きながらだ。ここ重要。
(先輩の手が、俺に、さ、ささ、触っ……!!!)
心臓がパーンするうう!
今すぐ押し倒したい。いや押し倒されたい。もう何でもいい。木兎先輩とお話できるだけで、俺、死ぬほど幸せです!