第1章 お嫁さんになりたい!
ふと、悪寒を感じた。
背筋にゾクリとしたモノが走る。
言い知れぬ違和感に肌が粟立って、その不快症状の根源を探した。
体育館のドアの前。
開きっぱなしになっている扉から、憧れの彼がいるコートへと目を走らせる。
視線が、──捕まった。
(……やべえどうしよう)
めちゃくちゃ見られてる。
超見られてるのだ。赤葦先輩に。しかも顔がマジ怖え。あれは確実にキレてる。ブチ切れしてる。
慌てふためくが時既に遅し。
ツカツカとこちらに歩み寄った赤葦先輩は、盛大に舌を打ってみせて、それからこう言った。
「毎日そこで何してるの、お前」
どうして、今更?
木兎先輩に一目惚れをしてから早数週間。あの日から今日までずっと通い続けても、一度も怒られたことなかったのに。
どう答えようか迷って、迷って、考えあぐねた末。俺は、声を低くしてこう言葉を返した。