第1章 お嫁さんになりたい!
とある日の放課後だった。
ほぼ毎日のように学校をサボっていた俺は、教師から呼び出しをくらっていた。
久々の登校。気は向かない。
どうせ自主退学を迫られるんだろう。諦めにも似た想いを抱きつつ、職員室のある西校舎へと歩を進める。
そのときだ。
校舎からまっすぐに伸びた渡り廊下。敷き詰められたコンクリートの、奥の、そのまた奥。
『ヘイヘイヘーイ! 絶好調ォ!』
聞こえたのは、やけにテンションが高い男子生徒の声だった。
無意識に惹かれていた。
言うなればあれは、そう、灯りに引寄せられる蛾のように。本能の部分で惹かれたのだ。
フラリと立寄った体育館。鋼鉄製のドアをほんのちょっとだけ開けて、ナカの様子を伺いみる。
俺は、目の当たりにした。
まるで羽でも生えてるんじゃないか、ってくらい、天高く舞いあがる彼の姿を。振り下ろされる力強い腕を。ボールが叩きつけられる轟音を。
『……すっ……げえ……!』
これが、木兎先輩との出会いだった。