第1章 お嫁さんになりたい!
俺、櫻田。16歳。
最近のマイブームは放課後の体育館通いだ。部活には所属してないが、男子バレー部の練習を眺めるために、こうして毎日足繁く通っている。
「ラスト寄越せ! 俺が打つ!」
瞳に映るのは、彼。
梟谷排球部のエースで主将、木兎光太郎先輩だ。歳は俺のふたつ上。
「よっしゃァァ! 俺、最強!」
今日も今日とてキレッキレのスパイクを打ちこむ先輩。弾ける笑顔が眩しすぎて目が開けられない。
滴りおちる汗は珠のようだ。
できることならひと雫舐めとって、ん、しょっぱい、とか言いたい。スゲエ言いたい。
「んあー! 今日も暑っついなー!」
俺調べによると木兎先輩が愛用してるのはシトラス系の制汗剤である。近寄ったらどんな匂いがするんだろう、と日に三十回は考える。絶対いい匂いだよな。
ああ、もう、一回でいいから嗅がせてくんねえかな。
(やべ……考えただけで勃つ)
梟谷学園一の不良などと噂されている俺、櫻田、16歳。華の男子高校生。
言っとくが俺はゲイじゃない。
歴としたストレートだ。女が好きだし、男を掘る趣味も、掘られる趣味もない。なかった。そのはずだった。
──彼に出会うまでは。