第1章 お嫁さんになりたい!
「……俺もだから」
壁ドンフィーバーで浮かれていた俺に、一言。赤葦先輩は冷たい声色でそう告げた。
俺もだから。
それは、やはり、木兎先輩のことなんだろう。そりゃそうだ。あんな魅力的なひとの隣にいれば誰だって恋におちる。
わかってた。気付いてた。
だけど、負けちゃいられない。俺だって好きなんだ。木兎先輩を好きなキモチは、誰にも負けない。
「……負けません」
確固たる意思。宣言。
俺の一丁前な宣戦布告に、赤葦先輩は、眉頭を寄せて怒りを露わにした。
「へえ、いい度胸してるね」
途端に近くなる赤葦先輩の顔。というか唇。うすく整ったそれが漏らす吐息は熱く、香るのはミントの匂い。
たぶんアレだ。ミ◯ティア。
赤葦先輩は、制服の胸ポケットにタブレット菓子を常備している。もちろん俺調べ。
(……と、いうことは、だ)
赤葦先輩ったら俺にヤキ入れる前にもミン◯ィアでお口ケアしたのかまったく赤葦先輩ったら!かわいい!!!