第1章 お嫁さんになりたい!
ドンッ……!
背中と後頭部にニブい衝撃。
じわりと広がるのは痛みだ。脳がアドレナリンを噴出させて、視界が赤に染まっていく。
「痛……ってえな……!」
何すんだよテメエ。
そのくらい言ってやろうと思った。いくら先輩とはいえ、突然呼び出しといて【これ】はないだろう。
倉庫の壁に押しつけられた右肩。
赤葦先輩の体重をかけられてるせいで、身動きができない。
俺は175cmしかないし、先輩はたぶん180cmを越えてる。背丈もリーチも敵わないのだ。悔しいことに。
睨みあげる視線の先。
図らずも上目遣いで、見上げる。憎々しげに俺を見下ろす、彼を。赤葦京治先輩を。
(はううっ……! イケ、メン!!!)
鼻血ブーだ。もはや吐血だった。
全身の血という血が顔面に集まる錯覚。頬が熱い。目元が熱い。あれどうしよう今更だけどこれ壁ドンじゃね!!?
そういえば、と思い出す。
赤葦先輩はモテるのだ。
クールで品行方正。おまけに背も高いし、スポーツセンスは抜群だ。加えて梟谷学園が誇るバレー部の副主将なのだから、モテないワケがない。
そんなモテ男に、俺はいま、壁ドンをされています。全校の女子生徒の皆さん。さぞ羨ましかろう。