第7章 戸惑う心
元から薄い感情は切り離して判断を行う。
トリアージする者は残酷だ、人間ではない。
そう非難されることが多い。
それは目の前に居る患者に優先度をつけるからである。
患者を選ぶ、医者の…人のすることではない、と。
誰も進んでやりたがらない。
特に女や若い者は情に流され判断を誤ってしまう。
だから私がやるしかない。
私なら心を殺すことはなんてことない。
また現場で治療を施す医師も心を殺す必要がある。
医者が潰されない為だ。
一通りのトリアージを終え、白いテントに脚を踏み入れる。
ここは搬送待ちの重症患者が集められている。
患者はそれぞれの色ごとにまとまって貰っている。
でなければ効率的に患者を診ることは出来ない。
だが、黒タグだけは別だ。
青いビニールシートの上に縦にに並べられ、その上から更に同じタイプのビニールシートを被せられる。
ごく稀に自分でタッグを切り取り、重症患者の振りをする者も居る。
実際患者を前にすればどっちが重症かなんてすぐに分かるというのに。