第7章 戸惑う心
「ヘリあと1分で到着します」
操縦士の言葉により一層気を引き締める。
「亜城西ドクターヘリより杉野消防。
まもなく現場に到着する。
現場直帰への着陸を要求します」
続けて操縦士が消防に連絡を入れた。
『杉野消防、了解しました。
周囲に避難者が多数居る為充分に注意してください』
その言葉から約1分後、ヘリは現場付近に降り立った。
ヘリから降りると悲惨な光景が広がっていた。
1部、もしくは半分以上が潰れたり横転した自動車。
飛び散ったガラス。
事故独特の焦げた匂い。
いたるところに飛んでいる真っ赤な血と浅黒く変色した血の痕。
助けを求める声。
家族を呼ぶ声。
痛みに悶える声。
患者を心配する声。
興味本位で群がる野次馬の声。
この現場には様々な声が散乱している。
中でも野次馬の声が1番気に障った。
消防が制止している外から中を覗き込み、携帯機器で撮影をし更に野次馬を呼び込む。
「私はトリアージをする。
藤代達は治療をお願い」
藤代とナースを治療の方へ行かせる。
2人は悲惨な現場へ、そして私は患者の群がる現場へとそれぞれ向かった。