第7章 戸惑う心

RRR…。


電話が鳴ると緩んだ空気が一瞬にして緊迫した空気へと変わった。


「亜城西救命センター」


右手で受話器を取り、電話に出る。


『杉野消防よりドクターヘリ要請です。

高速道路で多重衝突、死傷者不明です』


「分かった、出動する。

詳細分かり次第無線で知らせて」


すぐ隣にある透明のプラスチックの壁で仕切られたCS室へ目を向けるとOKマークが出たので了解した。


要請があるとCSは操縦士にヘリが飛べる環境下にあるか電話で尋ねる。


OKならば身振りで教えてくれる。


それに基づいて返答をする。





高速道路で多重衝突。


恐らく負傷者は大勢居る。


「…藤代、飛べる？」


人手が欲しい。


「勿論やで、その為に来たんやから」


口端を上げ頷く藤代。


その藤代と共に処置室へ急ぎ、足りない機材を調達する。


「あっ、待ってくださいっ」


必然的に処置室まで着いて来るフェロー。


話している時間が惜しい、振り払うのはあとででも出来る。


ヘリにも基本的なセットは積んであるが量に限りがある。


現場に着いてから足りないと分かったのでは遅い。


事前に把握し持って行く必要がある。