第6章 初めての…
「そういえばお聞きしてなかったんですが、お2人が初めて会ったのっていつなんですか?
やっぱりここに配属されてからですか?」
とある日の昼下がりのステーション。
クッキーを口いっぱいに頬張りながら尋ねるフェロー。
そんな話はどうでも良いけど、ポロポロ食べカスを零さないで欲しい。
「興味ない」
机に頬杖を付き、パラリと医学書をめくる。
いちいちそんなこと覚えていない。
例え覚えていたとしても君に話す義理はない。
話す必要もないし、そんな時間勿体ない。
「違うよ。
神那ちゃんのことはここに来る前から知ってるよ。
って言うのも元々同じ病院に勤めてたからね。
勿論科は違うけど」
私が語らずとも神崎が語る。
いつぞやのソレを見つめながら話している。
「そうだったんですか!?
神崎先生と初めて会った時の神那先生ってどんな感じだったんですか?」
「くだらない」
「最初はね、変わってるなぁって印象かな。
だって大学病院に居るのに地位に興味ないんだよ?
上の人にも平気で意見するし。
腕が良いのにその腕が死んでたんだよ」
かつての神那ちゃんは今よりももっと、1匹狼で誰にも頼ることなく過ごしていた。
上司にも平気で嚙みつき、目をつけられていた。
当然そんな彼女に与える手術も近づく人間も居ない。
腕は誰よりも優秀だったのに誰もそれを使おうとしなかった。
いや、使えなかった。
上に目を付けられていては大学病院では出世は壊滅的だ。