第4章 現実
「現場の機材じゃTAEは出来なかったから、言われた通り貯留した血液は吸引して、クランプしたけどあくまでも応急処置。
あとの処置頼んでも良い?
バイタル80、呼吸数26、SpO2は酸素投与で100%。
瞳孔左右差なし」
患者をヘリから降ろし、処置室へ運ぶまでの道のりで患者情報を話す神崎。
これも時間短縮の為に我々が考え出したこと。
「移動させる。1、2、3!」
処置室へ着き、ヘリから乗せて来たストレッチャーから、院内で使用しているストレッチャーへと患者を移す。
声を掛けるのも、皆の息を合わせて効率的に患者をストレッチャーから処置台に移す為である。
ヘリは次の出動に備えて万全の状態で待機しておく必要があるから、いつまでもヘリの機材を使う訳にはいかない。
「そのままオペ室運んで。神崎アシストして」
「ん。了解」
「俺も行きますっ」
「勝手にして」
すぐに手術着に着替え、オペが始まる。
*****
「……終了」
ふぅ、と息を吐き出す。
使った手術着やゴム手袋を捨て、オペ室の外で念入りに手を洗う。
「ん、お疲れ様。神那ちゃん」
「お疲れ」
水道で神崎と隣り合わせで手を洗い、労いの言葉をかける。
「近藤の方はHCU、こっちはICUへ」
「はい」
オペ室に残っている看護師に伝え、ステーションへ戻る。