第3章 救命の過酷さ
「居ることは居るんですね」
「人数は多くない。初期にここで研修した内科医」
医師の中で話が合うのは神崎とこの医師、藤代。
あとはCSとフライトナースだけ。
「何人かは会ったことあるけど、私が認めているのは1人だけ」
「へぇぇ……神那先生が認めるフライトドクター、会ってみたいです!」
くだらない、なんでこんなこと話して……。
書き終えたカルテをしまい、部屋の隅に備わっているコーヒー機でコーヒーを注ぐ。
鼻腔をくすぐる芳しい香り。
口に含むと疲れた身体に染み渡る苦味。
頭が冴えていくのが分かる。
「あ、俺もコーヒー頂いても良いですか?」
「別に。自分で作るなら好きにすれば」
「はい」
「……オペ見学して何か感じた?」
「正直、ちょっと怖じ気づきました。怖かったです。
目の前で起こっていることなのに、どこか遠くの出来事のように感じてしまって、身体が動かなかったです。
患者さんを前にすると目の前のことしか考えられなくて……」
まぁ、普通はそうか。
聞いたは良いが特に興味もない話題だった。