第2章 外科的尊敬
「お疲れ様です。
霜月先生、今日の当直よろしくお願いしますね」
次に入って来たのは藍色のユニホームに同じく首から聴診器を掛けている医師。
「分かってる」
「あなたがフェローね?噂で聞いてるわ。
困ったことがあったら言ってね」
「水原紫音です、よろしくお願いします」
産婦人科の恵。
腕はそれなり、人柄普通。
胸元辺りまでの茶髪を1つにまとめ、いつもハート型のネックレスをしている。
可もなく不可もなくと言った人物。
特別腕が良い訳ではないが、そこそこ無難に対応は出来る。
この病院には話の合う人間は少ない。
なぜならそれは皆現状に満足しているから。
探究心がまるでない。
医術は日々進化している。
我々医者も学んでいかなければ、どんどん取り残されてしまうだけ。
それでは助けられる命も助けられなくなる。
「じゃあ僕は定時過ぎだから先に宿舎戻るね、明日ヘリ担だし早めに休むよ。
なんかあったら呼んでね」
椅子から立ち上がり、大きく伸びをする神崎。
「あ、お疲れっした」
「お疲れ様でした、神崎先生」
「お、お疲れ様でした!」
「お疲れ。極力呼ばないから」
「神那ちゃんの言葉は信頼出来るねぇ」
言葉に信用?くだらない。
相変わらず、思ってもいないことを口にする神崎。
腕は信頼してるけど、本当にそれだけだ。
それ以外は何も信頼していない。