第15章 感情で動く、愚かな医者
「神那先生、今日来れますかね…?」
空席のままの隣にチラチラと視線を送る。
「来るよ。
神那ちゃんならきっとね」
「せやで。
神那さんはちゃんと身体治して来る人やから」
「おはよう」
「あ!
おはようございます、神那先生」
「おはようさん」
「おはよ、神那ちゃん」
「もう身体は大丈夫なんですか?」
「1日で治すって言った筈だけど。
ヤボなことは聞かないで」
「今日の担当は予定通りやで。
俺がヘリ担で神那さんはICU、純さんはHCU」
「分かった」
変更点はなし、と。
RRR…。
「はい、亜城西救命センター」
ヘリ担である藤代が受話器を取った。
『志方消防よりドクターヘリ要請です。
志方地区マンション3階より転落事故です。
患者は大杉一郎さん、80代男性。
バイタル70、血圧70の60、SpO2は80です』
「了解や、出動します。
ほな、俺行って来ます」
軽い口調とは反対に全速力で走り出した。