第12章 実力社会
「少しの間だけ待つ。
それでも来ないなら置いて行く」
「了解」
「お、遅れてすみませんっ」
しばらくして、息を切らせたナースが慌ててヘリに乗り込んで来た。
器材を多く抱えていたことから、器材選びに迷ったのだろうと予想が出来る。
「別に」
ドアが閉められると同時に飛び立った。
「状況、確認しなくて平気なの?」
姿勢を正して景色を見ているフェローに尋ねる。
「え?」
「現場の状況、把握しなくて処置出来るのかって聞いてるんだけど。
景色なんか見てないで。
今日のフライトドクターは君でしょ?」
「あ、は、はい」
震える脚でカチッと通信ボタンを押した。
「あ、亜城西救命センターから嵐山消防本部へ。
現場の詳しい状況を教えてください。
お願いします」
「教えてください、までで良い」
ボソリと呟く。