第12章 実力社会
『嵐山消防本部よりドクターヘリ要請です。
場所は嵐山区、建物火災です。
救助は終了し現在は消火活動をしています。
あ、患者は気道熱傷患者と熱傷ショック患者の2名です』
思い出したかのようにつけ加える。
「オーケーや、出動します」
藤代が返事をするのと同時に踵を返した。
【気道熱傷】
熱気や化学物質を吸い込んだ時に起こる気道の熱傷。
気道の粘膜が浮腫(フシュ)を起こし、気道が閉塞して窒息する場合がある。
火災の際に顔に煤(スス)がついたり喉が痛いといった時には注意が必要。
【熱傷ショック】
血管の透過性が増して血漿が組織に流出してしまう為、充分な循環血液量が得られずに血圧が低下する現象。
「物資が必要な時は処置室で調達してからヘリに向かう!」
「は、はいっ」
返事をするなり慌てて着いて来る。
ちゃんと口に出して言わないと通じないようだ。