第12章 実力社会
瑠璃の死亡から1日。
「おはようございます」
どこか吹っ切れたような顔でステーションへと入って来るフェロー。
「おはよう」
思っていた以上に切り替えが早いようだ。
「おはようさん、水原」
「あれ?
今日神崎先生は居らっしゃらないんですか?
遅刻ですかね」
「神崎なら朝1でオペ」
一体神崎のことをなんだと思っているのか。
口調は緩く、普段は穏やかだが仕事に手を抜くような人ではない。
「そうですか、そうですよね」
「もう吹っ切れたん?」
「はい。
まだ少し引きずってますけどね。
いつまでもウジウジしてる訳にもいかないんで」
「ん、ほんなら良かったわ」
「はい、これ君に」
無線機を手渡す。
「ありがとうございます」
それを丁寧に受け取るとポケットへとしまった。
「水原もいよいよヘリデビューかぁ。
ま、神那さんが同乗するんやったら大丈夫やろ」
「そういう傲りが失敗を招くってこと忘れたの?」
冷静な物言いで指摘する。
「分かってるで、ほんのジョークやで」
ホンマお堅いなぁ、と笑う藤代。