第8章 助かる、助からない
「誰か心マ代わって。
DC10ジュールでチャージ」
「あ、それ俺が代わります」
「え、DCですか?
僕AEDの方しか使い方知らないんですけど…」
威勢良く頷き交代する隊員と、顔色を青くして動きを止める隊員。
【AED】
自動体外除細動器。
【DC】
直流電流式除細動器。
一般的に広く知られていて比較的誰でも扱えるのがAEDである。
一方のDCはチャージ時間こそ少ないが医療関係者にしか扱うことが出来ない。
更に言うのならAEDは心停止患者にしか作動せず誤作動の心配はないが、DCの場合はスイッチさえ入れれば誰に対しても扱うことが出来てしまう。
作動時に対象者に触れていれば通電する場合だって考えられる。
我々の安全面を考慮するのならAEDを選びたい、というのが隊員の本音らしい。
「チャージの仕方ぐらい分かるでしょ?」
額の汗を腕で軽く拭いながら尋ねる。
車内の温度は患者の体温を保つように上げている為、汗が滲み出て身体がベタベタする。