第8章 助かる、助からない
「白車に運んで、そこで処置する」
そっちの方が必要な機材が揃っている。
「はいっ」
細心の注意を払い患者をストレッチャーに乗せ、白車に運び入れる。
「服切るよ」
意識はないけど念の為口に出す。
医療用のハサミで衣服を縦に切って行く。
素肌を露わにさせ、医療器具を取りつける。
「ライン取って輸液流して。
挿管するから」
「はい」
「体温いくつ?」
「28度です」
「暖房入れて、出来るだけ中を暖かく」
「は、はい」
失った分の血液は輸血で補い。
下がった体温は車内を暖めることでなんとか上げ。
弱まった呼吸は挿管して確保し。
止まりかけた心臓は心臓マッサージを行うことでなんとか動かす。
あらゆる手を施し、無理矢理生命維持に努める。
けれども患者は一向に持ち直さず、ピコンピコンとモニターが赤く点滅し、好ましくない音を鳴らした。