第8章 【五月晴れの正しい使い方日和】青峰大輝
人波に逆らって歩き続け、薄暗い階段を足早に登り、ギギーッと音を立てて重いドアを押した先は、どこまでも広がるスカイブルー。
凄い!思わず声に出して、屋上の端までダッシュで駆け抜ける。
ガシャンと音を立ててフェンスを握り校庭を見下ろすと、そこに見えるのは慌てて校舎に駆け込む生徒たち。
視線を上げた先には雑然としたビル群と、所々に生える人工的な緑の木々。
そして、もっと視線を上げれば、もう見えるのは一面の空、空、空!
教室から眺めた小さい空なんかじゃない、なんの枠にもはまらない大きな青い空に、両手をめいいっぱい伸ばして深呼吸する。
「キモチイイーーーーー!!!」
無駄に大声を張り上げると、胸の中のモヤモヤがスッとしたような気がした。
「誰だよ、うっせーな・・・」
ふと誰もいなかったはずなのに聞こえてきた声。
聞き覚えのある低音ボイスに驚いて振り返る。
青峰くん!?、そう叫んだ私が目にしたのは、広くて高い屋上のさらにその上から、かったるそうに私を見下ろしている彼。
「あー?・・・誰だ、テメェ?」
「小宮山璃音!一応クラスメイトなんだけど?」
もう入学して一ヶ月だよ?そう呆れ気味に返事をする私に、興味ねぇ、そう面倒くさそうに呟いた青峰くんは、隠しもせず大きなあくびを一つすると、もう一度ゴロンとそこに横になった。
「ねー、もう授業、始まるよー?」
「・・・」
「そう言えば青峰くん、さぼり常習犯だもんねー?」
「・・・」
何を言っても返事が帰ってこないその様子に、ちょっとイラッとして、でもそんな青峰くんに断然興味が沸いてきて、入り口のハシゴに手を掛けると、ダーッと一気に登りつめる。
「青峰くん、ちょっと聞こえてるー!?」
ひょいっと顔を覗かせてみつけた青峰くんは、私なんか完全無視で空をながめていて、青峰くん?また声をかけるとうるさそうに背中を向けた。
・・・とことん無視するわけね?
「・・・アホ峰。」
「ああ!?」
ボソッと呟いた私に、青峰くんは眉間にシワを寄せて振り返ったから、やっと返事してくれた、そう言ってえへへと笑った。