第4章 【ウイルス日和】黄瀬涼太
「俺は年下でいつも璃音っちに甘えてばっかで、頼りねーかもしんないけど、こんな時くらい俺が支えたいッス・・・」
そう真剣な顔にますます身体が熱を帯びていくのが分かって、あの・・・そう目を泳がせると、涼太の顔が近づいてくる。
「ダメだよ・・・涼太にうつしちゃう・・・」
「璃音のウイルスなら大歓迎ッスよ?」
涼太ってばズルイ、こんな時に「っち」つけないなんて・・・
そんな風に言われたら、頭ではダメだって分かっているのに、すぐにキスして欲しくなっちゃう・・・
そっと瞳を閉じて涼太のその形の良い唇を待つ。
キュウー・・・グルグル・・・
唇が触れ合うその直前、突然鳴り響いたその間抜けな音に、ゴ、ゴメンナサイ・・・そう真っ赤になって俯くと、口を覆って肩を小刻みに振るわせていた涼太は、璃音っちはお腹の音もカワイイッスね、なんて言って頬をなでて立ちあがる。
「お粥、作るッスよ?それとも違うのがいいッスか?」
「ウウン、オカユ、タベタイデス・・・」
他になんかして欲しい事は?なんて優しく聞いてくれる涼太に、んーってちょっと考える。
「着替えたいから・・・」
「リョーカイッス!!」
蒸しタオル作ってきて、そう言い終わらないうちに、涼太は目を輝かせて私のブラウスのボタンに手をかけるから、違う!そう言って彼の手をギュッとつねる。
もういいから涼太はお粥作ってきて、そう言ってドアの向こうを指差すと、酷いッス、俺の純粋な親切心を・・・そうブツブツ言いながら部屋を出る涼太の頭に、垂れ下がったワンコの耳が見えた気がしてクスクス笑った。
着替えを終えてもう一度横になると、また少し眠気が襲ってくる。
キッチンからカタカタと涼太がお粥を作る音が心地よく響いて安心感を与えてくれる。
お待たせッス!なんて笑顔でお粥がのったトレイを両手に、満面の笑みでそのドアから顔をのぞかせる涼太を想像しながら、微睡みの中へと身体を預けた。
「璃音っち、お粥、出来たッスよ・・・ってまた寝ちゃったんスね。」
起きたら美味しいお粥が待ってるッスよ?遠のく意識の中でそんな涼太の声と、唇に触れる優しい熱を感じた気がした。