第3章 12月25日(土曜日)
「俺も、我慢する」
うん、と真面目な顔で頷かれても困る……
「俺はおまえのことが好きだし可愛いと思ってる。そして俺は青年真っ盛りの男だ、男。だからおまえに触ったら絶対シたくなる。でも俺は我慢する。おまえが高校卒業するまで、あと3か月」
「……あの、烏養コーチ、言ってる意味がよくわからないんですが……」
ゆっくり手をあげて茶化すと、
「烏養コーチって言うな。俺はおまえのコーチじゃない」
「じゃあ、何?」
「なんだと思ってるんだ、おまえは」
「彼氏………繋、心?」
首に腕を回して抱きつく。
「繋心……」
「せめて、さん付けしろ」
「やだ」
「じゃあ離れろ」
「なんで」
「俺がヤバい」
「……?」
「おまえ、パジャマの下、下着つけてないだろ……」
あたりまえじゃん。
寝てたんだから。
「……いろいろ生で当たって、ヤバいから、な」
本気で焦った顔が可愛くてたまらない。
「大好き……繋心」
耳元でそっと囁く。
ワザと、吐息を吹きかけるように……
ガタンッ。
いきなり椅子の背が倒れた。
「きゃっ……」
焦ったように烏養さんが圧し掛かってくる。
「さっきの、来年からってことでいいか……?」
さっきの……?
「来年はおまえが卒業するまでセックスしない。来年まであと5日は例外とする、以上」
ビビッ、ピピッ。
烏養さんの時計が小さく日付の変わり目を告げる。
言い忘れてた、私。
「メリークリスマス……繋心」
奪われる寸前の唇で囁くと、言葉はそのまま烏養さんの口の中へと吸い込まれていった。