第6章 直人の素顔
「俺さ、2歳の時に施設に預けられたから親の顔覚えてないんだ。そこの職員の人達が親みたいな存在で…その人達によく言われたんだ。ご飯を食べる時は作ってくれた人に感謝して食べなさいって。まぁ、そこに18歳まで居て、高校卒業したら就職して、高校の時にバイトで貯めた金で一人暮らし始めて今に至る…みたいな。」
「そうだったんだ…。」
明るい直人からは想像出来ない境遇だった。
かける言葉が見つからず、黙る私を見て直人が笑った。
「ま、なんだかんだ幸せな人生歩んでるからいいんだ。しんみりさせちゃってごめんな。」
「ううん、私こそごめんね。」
私は直人の手を握った。
「私が直人に出来る事ってご飯作るくらいしかないけど、それだけは出来るからいつでも食べに来てね!」
「ありがとう、シュリ。」
「よし、食べよう!今日もいっぱい作ったからね!」
「これホントうまいよ!ていうかシュリの料理はなんでもうまい!」
不謹慎かもしれないけど私は嬉しかった。
直人が、自分の生い立ちを話してくれた事が。
私が彼を幸せにしたい。
そんな想いが強くなった。