第4章 大学入学
シュリの悲しそうな顔が頭から離れない。
シュリは、俺の気持ちに気付いていない。
それに、あいつは恐らく池田のことが好きだ。
シュリの鈍さに苛立ち、池田への嫉妬心もあり、俺は好きでもない女を口説いて部屋に連れ込んだ。
シュリとは違い、軽くて馬鹿な女を抱くことで憂さ晴らしをしたのだ。
そこにやって来たシュリ。
律儀に俺の好物を作って。
だが、その行為が更に俺を苛立たせた。
そして俺はわざと、シュリを傷付ける言葉を吐いた。
きっと今頃一人で泣いているのだろう。
「ねぇ徹ー、続きしよ?」
「…ちょっと黙って。」
「なんでー?ねぇねぇ、あたし達付き合おうよ。」
「黙れって言ってんだろ!」
俺は名前も知らない女を怒鳴り付けた。
今まで好きでもない女を口説いて貢がせたり性欲処理として利用してきた。
しかし、シュリと出会ってから俺は変わった。
馬鹿みたいにシュリのことばかり考えて、嫉妬して、無理矢理犯そうとしたけど…出来なかった。
こんな感情は初めてだ。
一人の女に縛られて…これではまるで父親と同じだ。
浮気されても、借金を背負わされても、一途に妻を愛し続けたあの男と。
俺はそんな父親を馬鹿だと思いながら育ってきた。
結局母親は3年前に浮気相手の男と蒸発した。
それでも父親は母親を責める様な言葉は一言も吐かなかった。
「幸せになってくれていればそれでいい。」
なんて言いながら笑う、何処までも馬鹿でお人好しな男だった。