第4章 大学入学
翌朝、私は新しいスーツを着て部屋を出た。
今日から大学生だと思うと気持ちが高まった。
しかし、それも束の間。
ほぼ同じタイミングで徹が部屋から出てきた。
「おはよう、徹…。」
「…はよ。」
徹は黒い細身のスーツに青チェックのネクタイを付けていた。
認めたくないが、スタイルが良いからスーツが似合う。
徹はこの前の事など全く気にしていない様子だ。
大きな欠伸をし、半分寝てる様な顔で階段に向かう徹を引き止めた。
「徹!鍵、鍵かけてないよ!」
「あ?ああ…そっか。」
徹は鍵をかけようとするが、上手く鍵穴に挿せずに苦戦している。
見兼ねた私は徹の代わりに鍵をかけ、彼のスーツのポケットにしっかりと鍵を入れた。
「…もしかして、朝苦手なの?」
「低血圧…。」
よく見ると、ネクタイも曲がっている。
「もー、ネクタイも曲がってるし…ちょっとこっち向いて!」
徹のネクタイを結び直し、渇を入れるために胸を叩いた。
「これで良し!入学式くらいはちゃんとしなさいよ。」
「…お前は俺の母親かよ。」
「こんな息子絶対にイヤ。」
私の言葉を適当に聞き流し、徹はまた大きな欠伸をした。
行く先が一緒の私達は、必然的に一緒に登校することになった。