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薔薇と向日葵

第4章 大学入学


入学式前日。

午後7時。
いつも通り夕飯を作っていた。

今日はカレーライスとサラダ。
辛すぎるのが苦手な私が作るカレーは少し甘めの味付けだ。

コトコトとカレーを煮込んでいると、玄関のチャイムが鳴った。

「はーい。」

徹との一件があって以来、私はすぐに玄関のドアを開けないようにしている。

「あ、シュリー。俺ー、直人だよー。」

直人がわざわざ部屋を訪ねて来るのは初めてだ。

「今開けるねー。」

チェーンを外し、ドアを開けると、作業着姿の直人が立っていた。

手には何やら小さな箱を持っている。

「どうしたの?」

「明日入学式だろ?だからこれ、俺からのお祝い。」

直人に渡されたのは、駅前のケーキ屋さんの箱だった。

「え、いいの?ありがとう!」

実はこの店のケーキ、前から食べたいと思っていたのだ。

ただ、少し値段が高い為いつも我慢していた。

「直人、夕飯食べた?」

「いや、まだだけど…今仕事から帰ってきたからさ。」

「今日ね、カレー作ったの!良かったら食べてかない?」

「マジで?やったー!」

直人は子どもの様に目を輝かせて喜んだ。

直人を部屋に招き入れ、とりあえずケーキは冷蔵庫にしまった。

直人に麦茶を出すと、彼は一気に飲み干した。

余程喉が渇いていたのだろう。

空になったコップにもう一杯麦茶を注ぐと、直人は笑顔でお礼を言った。

「今カレー持ってくるね。」

「うん、ありがとう。」

直人の笑顔を見るだけで、嫌なことを忘れられる。

徹とは、あれ以来顔を合わせていない。
合わせたくもないのだが…。

直人はよく食べるので、ご飯もカレーも大盛りにした。

自分の分もよそり、まずはカレーライスをテーブルに運んだ。

「はい、どうぞ。」

「おお、うまそー!」

「私辛いの苦手だから、甘口なんだけど…。」

「全然いいよー。」

再びキッチンに戻り、先に作っておいたサラダを冷蔵庫から取り出す。

他にも運ばなければいけない物がある。

手が足りないからもう一回来ようと思っていたら、直人がキッチンに来た。
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