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薔薇と向日葵

第3章 危ない夜


「…うまいよ。」

徹はそう言って微かに笑った。

やはり、今日の徹は変だ。
いや、彼は変人の部類に入るとは思うが、今日は違う意味で変なのだ。

ペースを乱される。

それ以上特に会話はなく、直人の時とは違い、静かに食事は終わった。


私が食器を片付けてキッチンで洗い物をしている間、徹はテレビを見ていた。

洗い物を終えて戻ると、徹はいつの間にかうたた寝をしていた。

あどけない寝顔。
普段の言動はどうあれ、徹も私と同じ年なんだと再認識する。

さて、どうしたものか。
ベッドは一つしかないし、予備の布団がある訳でもない。

かと言って、流石に一緒のベッドで寝るのは気が引ける。

一晩だし、私はタオルケットをかけて床で寝るか。

「徹、寝るならベッドに寝て?」

徹の体を軽く揺すると、徹は目を開けた。

「…お前どこで寝るの?」

「私は床で寝るから、徹はベッド使って?」

「一緒にベッドで寝ればいいじゃん。」

「いや、それは流石にちょっと…。」

徹は躊躇う私の腕を引っ張り、ベッドに寝かせた。

私を壁際に寄せて、自分もベッドに横になる。

「ホントに一緒に寝るの?」

「なんもしねーから安心しろ。」

そう言って、徹は私に布団をかけて背を向けた。

私は徹にも布団をかけて電気を消し、同じ様に背を向けた。

「…お前と池田、付き合ってんの?」

ふと、徹が話しかけてきた。

「付き合ってないよっ…この前私の部屋で一緒にご飯食べたくらいで、あとは廊下ですれ違ったら挨拶するくらいだよ。」

直人と夕飯を食べた時の事を思い出し、幸せな気持ちが甦る。

「直人ね、美味しい美味しいって言いながら私が作ったご飯食べてくれて…ご飯もお味噌汁もおかわりしてくれたんだよ。」

「ふーん…。」

「食器洗うのも手伝ってくれて、直人って本当に優しいの。」

すると、徹は黙ってしまった。

少し喋り過ぎたかと反省していると、突然後ろから抱きしめられた。

「と、徹…?」

「さっきなんもしねーからって言ったけど、アレ嘘。」

「え…?」

「お前馬鹿じゃねーの。男と二人きりで同じベッドに寝て本当に何もされねえと思ってんの?」

徹の声はいつもに増して低かった。
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