第3章 危ない夜
直人に渡す分をタッパーに詰めて冷蔵庫に入れた。
自分で食べる分を器に盛るが、それでもまだ鍋の中には沢山残っている。
テレビを見ながらゆっくりと食事をしていると、玄関のチャイムが鳴った。
時計を見ると午後8時。
こんな時間に誰だろう…。
私はチェーンをかけたまま、玄関のドアを開けた。
そこには徹が立っていた。
顔に殴られた様な痣がある。
私は思わずチェーンを外した。
「徹っ?その顔どうしたの!?」
「ちょっと…ケンカ。」
「ケンカって…。」
徹の口角は切れて血が滲んでいて、服も汚れている。
「あのさ、悪いんだけど今日一晩泊めてくれね?鍵、どっかに落としてきちゃって…。」
「え…。」
正直、迷った。
徹を一晩泊まらせるなんて。
もしかしたら何かされるかもしれない。
しかし、外は夜になるとまだ寒い。
こんな傷だらけの人を一晩寒空の下で過ごさせるなんて…それこそ酷い人間だ。
「わかった、入って。とりあえず手当てしよ?」
「悪いな、サンキュ。」
今日の徹はやけに素直だった。
徹をベッドに座らせて、私は救急箱から出した消毒液をガーゼに染み込ませ、徹の切れた口角になるべく優しく当てた。
「ちょっと染みると思うけど我慢してね。」
「ん…。」
消毒をして、小さめの絆創膏を貼った。
「他に痛い所ある?」
「多分背中…かなり擦りむいた。」
背中を見るには、服を脱いでもらうしかない。
少し抵抗感があったが、今は仕方ない。
そう自分に言い聞かせた。
「徹、服脱いで?背中も見るから。」
「わかった。」
徹は着ていたニットを脱いだ。
一見華奢に見えるが、脱ぐと結構筋肉が付いている。
雪の様な真っ白な肌の至る所に擦り傷や痣が出来ていた。