第3章 危ない夜
その後数日は何事も無く過ぎていった。
直人とは、たまにアパートの廊下ですれ違うと挨拶を交わし、直人が職場でもらったお菓子をお裾分けしてもらったりもした。
今日も夕飯の買い物に行こうと、玄関のドアを開けると丁度直人も部屋から出てきた。
「あ、直人。」
「おー、シュリ。」
直人は仕事用の作業着を着ていた。
「今日はこれから夜勤?」
「うん、そうそう。」
「頑張ってね。」
「ん、ありがとう!」
直人はいつも、車で職場に向かう。
直人を見送って、私は駅に向かった。
スーパーに入り、いつもの様にカートにカゴを乗せて店内を回る。
今日の夕飯のメニューを考える。
肉じゃがが食べたいな…少し多めに作って、明日直人に届けてあげよう。
肉じゃがの材料を買って、アパートに戻った。
少し休憩をしながら、直人のことを考える。
ここの所、直人のことばかり考えてしまう。
優しくて、明るくて、人懐っこくて…直人みたいな人と付き合えたら、毎日楽しくて幸せなんだろうな。
そんな事を考えている自分が恥ずかしくなり、ベッドに身を投げて枕に顔を埋めた。
私は直人を好きになってしまったのだろうか。
初めて抱く感情に戸惑い、悶々としてしまう。
そうだ、こんな時はお風呂に入って気分を変えよう。
浴槽に湯を溜めて、お風呂に入った。
桃の香りがする入浴剤を入れる。良い香りだ。
お風呂から出て、料理に取りかかった。
やはり、料理をしている間も直人のことを考えてしまう。
また美味しいって言って沢山食べてくれるかな…。
そんなことを考えていたら、つい多く作り過ぎてしまった。