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薔薇と向日葵

第2章 出会いの春


一通り話終えた所で、丁度食器を洗い終わった。

私達はテーブルに戻り、話の続きをした。

「もう、あんなに自分勝手な人初めて見ました。」

「大変だったんだねー…俺はほとんど羽山くんと口聞いたことないからなぁ。」

「池田さんが来てくれて助かりました。もう、本当に挫折しそうになったから…。」

俯く私の頭を、池田さんがワシャワシャと撫でた。

顔を上げると、向日葵の様な笑顔。
この人の笑顔には人を明るくする力があると思う。

「大丈夫だよ、明智さん。」

「はい…ありがとうございます。」

池田さんは時計を見ると、腰を上げた。

「じゃあ、もう8時になるし俺帰るな。今日はありがとう。」

「いえ、こちらこそ。」

玄関まで池田さんを見送る。
何故か凄く寂しかった。
すぐ隣に住んでいるというのに。

私は池田さんのTシャツの裾を掴んだ。

「明智さん…?」

「あの、またご飯食べに来てくれますか?」

自分でも、何をしているんだろうと思った。
恥ずかしくなって手を離し、恐る恐る池田さんを見上げた。

池田さんは片手で口元を覆い、若干赤い顔をしていた。

「あの…はい。喜んで。それから…池田さんじゃなくて直人って呼んで。敬語も、使わなくていいから。」

「えっと…うん、わかった。私のこともシュリって呼んでね?」

「うん。じゃあ、おやすみ、シュリ。」

「おやすみ、直人。」

池田さん…直人はヒラヒラと手を振って隣の部屋へ戻って行った。

直人と過ごした時間は幸せだった。
私は確かに、胸の高鳴りを感じていた。

これが恋心なのか、今はまだ解らなかった。
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