第21章 すれ違う心
私は徹が起きたら伝えようと思っていたことを伝えた。
「徹、誕生日おめでとう。」
「あー、そういや寝てる間に19になったんだっけ。」
「そうだよ。これで同じ年だね。」
そんな話をしていると、看護師さんが病室に入ってきた。
「あ、やっぱりここにいた!羽山さん、まだお部屋で安静にしてなきゃ駄目でしょ!あなた昨日目を覚ましたばかりなんだから。」
「ヤベ…見付かった。」
徹はバツが悪そうな顔をした。
やはりまだ出歩くのは駄目らしい。
恐らく看護師さんの目を盗んで部屋から出たのだろう。
「はい、病室に戻りますよー。」
看護師さんは容赦なく、徹の車椅子を押して病室から出ようとした。
「じゃあね、徹。」
そう言うと、徹はヒラヒラと手を振った。
私は思った。
ずっと意識不明だった徹に奇跡が起きたのだ。
私にもきっと、奇跡が起こる。
そう信じて、治療を頑張ろう。
何より、これからはまた、徹が傍にいてくれるのだから。