第20章 変わらない想い
直人からのメールを読んだ私は、返信の内容に悩んでいた。
私が病気になったことを知った直人は、心配してメールをくれたのだろう。
本当のことを伝えるべきか、大したことではないと伝えるべきか…。
直人には、今まで散々心配をかけてきた。
だから、直人が引っ越した日…丁度病院に検査に行く日だったあの日も、直人には何も言わなかった。
とりあえず、何も返さずにスマホを机の上に置いた。
午後7時半。
仕事を終えた徹が面会に来てくれた。
「体調どうだ?」
ベッドの横のイスに座り、徹はそう言った。
「ちょっと前より副作用が辛いかなぁ。」
「そうか…。」
徹に、直人からメールが来たことを話すか悩んだ。
徹は直人を嫌っている…今はどうなのか分からないが。
「何かあったか?」
「え?なんで?」
心の中を見透かされた気がして、一瞬心臓が跳ねた。
「お前すぐに顔に出るから。」
そう言われ、少し恥ずかしかった。
「あの、ね。今日、直人からメールが来たの。」
「池田から?」
「うん…なんか七瀬と紫音先輩に偶然会ったみたいで、私が病気って聞いたらしいの。多分詳しいことは知らないみたいなんだけど…直人にもちゃんと話した方がいいのかな。」
そう言うと、徹は黙ってしまった。
何かを考えているようだ。
「…俺が話す。」
「え?」
「スマホ貸せ。」
徹は机の上に置いてある私のスマホを掴み、病室から出て行った。