第20章 変わらない想い
7月に入り、本格的に暑くなってきた。
今日は、今月誕生日を迎える子ども達のプレゼントを買いに久しぶりにこの町を訪れた。
懐かしい景色。
ふと、彼女の事を思い出す。
「シュリ、元気かなぁ。」
まだ、俺の想いは変わっていない。
子ども達と接する慌ただしくも充実した毎日の中でも、ふとした時に思い出し、胸が締め付けられる。
俺はパーキングに車を停め、駅の中の雑貨店に入った。
今月誕生日を迎える子どもはみんな女の子だ。
この雑貨店なら、女の子向けの物が売っている。
男が一人で入るのは少し恥ずかしいが、俺は店内を見て回った。
夏仕様のアクセサリーや小物が沢山並んでいて、どれがいいのか悩んでいると、見覚えのある女の子が目に入った。
あの子は確か、シュリの友達の七瀬ちゃんだ。
隣には別所さんもいる。
ふと、七瀬ちゃんが振り返り、思いきり目が合った。
「直人さん!?」
七瀬ちゃんの言葉で別所さんも振り返った。
「こんにちは。」
無視をする訳にもいかないので、二人に軽く頭を下げた。
「こんにちは。お一人ですか?」
別所さんが微笑みながらそう言った。
「はい、職場の買い出し的な感じです。」
「確か、養護施設で働いてるんですよね?シュリから聞きました。」
七瀬ちゃんの言葉に笑って頷いた。
「そういえば、シュリと羽山くんは元気?」
何の気なしにそう聞くと、七瀬ちゃんの表情が曇った。
「あ、えっと…。」
明らかに動揺している。
まさか何かあったのだろうか。
「何かあったの…?」
「えっと…シュリ、病気になって長野に帰ったんです…。」
「シュリが病気!?」
驚きのあまり、つい大きな声を出してしまった。
他の客や店員に不審な目で見られ、声を抑えて話を続けた。
「病気って…どういうこと?」
気まずそうにする七瀬ちゃんを庇うように別所さんが言った。
「気になるなら、本人に直接聞いたらどうですか?シュリの連絡先変わってませんから。」
七瀬ちゃんの様子からして、ただ事ではないのだろう。
しかし、別れた俺から連絡が来たら、シュリはどう思うだろうか…。
それ以上七瀬ちゃんから話を聞くことも出来ず、二人は店から出て行った。