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薔薇と向日葵

第18章 徹の決断


エミリは気を使って病室から出て行った。

徹はベッドの横のイスに座り、私を見つめた。

「体、大丈夫か?」

「う、うん…とりあえずは…。」

久しぶりに話すせいか、緊張してしまう。

何を話せばいいか悩んでいると、徹が口を開いた。

「シュリ、怒るなよ?」

「な、なに…?」

「俺、大学休学してこの近くに引っ越して来たから。」

一瞬、徹が何を言っているのか理解できなかった。

「…はあ!?」

数秒の沈黙の後、事の重大さを理解した私は大きな声を上げてしまった。

「なに言ってんの?冗談でしょ?」

「いや、マジで。」

徹は飄々とした態度でそう言った。

「何やってんのよー…。」

まさか、大学を休学して長野に引っ越して来るなんて…。

「馬鹿なの?」

「馬鹿とか言うなよ。静岡まで行ってクソ親父に頭下げてまで来たんだから。」

「え…?お父さんに…?」

「引っ越しの費用とか、当面の生活費とか…頼れるのあいつしかいなかったから。」

あんなに父親のことを嫌っていた徹が、わざわざ静岡まで行き、頭を下げてお願いしてくれたなんて…。

そこまでして徹は、私の傍に来てくれたんだ。

そう思うと泣きそうになった。

「馬鹿とか言ってごめん。」

徹は私の頭をそっと撫でた。

「まぁ、だから…これからはいつでも会えるから。」

「ありがとう、徹。」

嬉しくて、嬉しくて。
やっぱり私は泣いてしまった。
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