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薔薇と向日葵

第16章 発覚


「なんか、不思議。」

徹が小さく呟いた。

「なにが?」

「普通の母親ってああやってキッチンに立つもんなんだろうけど、俺は自分の母親がキッチンに立ってる姿見たことないから。」

徹は昔のことを思い出したのか、自嘲気味に笑った。

「徹、小さい頃はご飯どうしてたの?」

「カップ麺とかコンビニ弁当とか…何も食わない日もあったな。」

小さい子どもにカップ麺やコンビニのお弁当…信じられなかった。

しかし、そうやって徹は生きてきたのだ。
同情するのは失礼な気がした。

「今日は肉じゃがと塩の唐揚げだよ。いっぱい食べてね。」

「マジか…!」

徹は目を輝かせた。



「できたわよー。」

母が料理を運んできた。

皿にてんこ盛りに盛られた唐揚げと、美味しそうな肉じゃが。

味噌汁は、母がよく作る大根の味噌汁だ。

テーブルに料理が並んだ。
久しぶりの母の料理だ。

「いただきます。」

3人で手を合わせ、食事を始めた。

徹は真っ先に唐揚げに手を伸ばした。

一口食べると、うまい…と呟いた。

「シュリの唐揚げと同じ味だ。」

徹がそう言うと、母が笑った。

「そりゃそうよ。私が料理教えたからね。」

中学生くらいの頃から、母に沢山の料理を教えてもらった。

私は肉じゃがを食べた。

「おいしいー。」

やはり、煮物系はまだまだ母には敵わない。
同じ材料、調味料を使ってもどこか違うのだ。

しかし、美味しいのに、食べたいのに、なかなか箸が進まなかった。
体が食べることを拒否している様な感覚。

母が私の食欲が無いことに気付いた。

「シュリ、今日はあまり食べないのね。」

「ごめんね、美味しいんだけど…なんか、食べれなくて。」

「無理しなくていいのよ。」

母が心配そうに私の背中を撫でた。
徹も箸を置いて私を見つめている。

二人に心配をかけているのが辛かった。

「それにしても、徹君は随分とイケメンね。モデルとかやってるの?」

母が場の空気を変えるように、徹に話を振った。

「いや、何も…。」

「あら勿体ない。でもシュリにこんなに格好いい彼氏ができるなんてお母さんびっくりだわ。」

「彼氏…?」

徹が横目で私を見た。

ここは話を合わせて…と目で訴えると、徹は理解したようだ。

食事を終え、母が洗い物をしている間に徹と話をした。
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